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茅ヶ崎市美術館「江戸の遊び絵づくし」に行ってきました だまし絵・判じ絵で江戸の画家と知恵くらべだ
2019年9月7日(土)~11月4日(月・祝)まで茅ヶ崎市美術館で開催されている展覧会「江戸の遊び絵づくし」に行ってきました。
江戸時代の絵師がユーモアたっぷりに描いた、謎解き、騙し絵、文字遊びなどの遊び絵の世界を取り上げた展覧会です。
江戸のトリックアートと言ってもよいかもしれません。
西洋美術など高尚なものは無教養のためあまり理解できないのですが、遊び絵などはめっちゃ分かりやすいので、好奇心を刺激され楽しく過ごせました。
美術館の入り口では、なんと不思議な絵がお出迎え。
何の絵なのかはあとの解説をお楽しみに。
「江戸の遊び絵づくしは1階と地下1階の展示室3つを利用。
全部で7つのコーナーが設けられています。
一部写真撮影可の作品もあったので、それらを交えながら見ていきましょう。
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1章 よって、たかって、こしらえる
歌川国芳「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」<大判錦絵・復刻版・嘉永期(1850年頃)主版>
人の形を寄せて顔や体の一部を描く寄せ絵の傑作。
一見こわもての人の顔も、よく見ると何体もの人間が集まって寄り添い作り上げていることが分かります。
鼻の部分なんて、必死に捕まってる感が出ています。
人が集まる ⇒ 人望がある いい人であるというのを表しているんですね。
まさしく「見かけは怖いがとんだいい人だ」
他にも「人をばかにした人だ」「人かたまつて人になる」「としよりのよふな若い人だ」など寄せ絵の名作がずらり。
子猫をたくさん集めて大猫にした寄せ絵もありました。
2章 ふしぎなからだ-合体・あべこべ・顔三つ!?
歌川貞景「五子十童図」<大判錦絵・天保期(1830~1844)>
頭は5人分しかないのに、見方を変えると10人いるように見える! ……ちょっと強引かもしれませんけど。
なにをかくそう、この絵こそ美術館入口で出迎えてくれたものです。
左下、矢印で指し示した部分に穴が開いている顔ハメ看板になっています。
美術館を訪れた記念に写真を1枚いかがでしょう。
歌川国芳の「欠留人物更紗(あくびどめじんぶつさらさ)」は、五子十童図よりもさらに複雑。14人の体で35人に見えるといわれています。
さらに、ラグビー日本代表リーチマイケル主将の似顔絵を発見。江戸時代からラグビーはあったのか! と思ったら、上下をあべこべにしても人の顔に見える「両面相 伊久 だるま げどふ とくさかり」という上下絵でした。(現場では実際にくるくる回すことができます)
3章 幸せはこぶラッキーアイテム
歌川芳藤「有掛絵 ふ尽くしの福助」<大判錦絵・安政五年(1858年)三月>
「不老富貴に叶う福助」のとおり、「ふ」の付くもので構成された福助の絵です。
眉=筆
目=ふぐ
鼻=「ふ」の字
口=房
耳=袋
頭=風呂敷
手=文(ふみ)
扇=文と筆
着物のしわ=か・の・お・ふ・く・す・け(叶福助)
なんともおめでたい気分にさせてくれる作品。
他に「ふ尽くしのお福」「ふ尽くしの福禄寿」なども。
4章 チャレンジ!江戸っ子と知恵くらべ
二代歌川広重(歌川重宣)「しょく類はんじ者 上戸」<大判錦絵・嘉永四年(1851年)>
江戸時代の庶民に親しまれたのが、「判じ絵」という絵を読み解いて答えを導き出すなぞなぞ。
板に血が付いている絵があったら「いたち」のようなもので、むかし平成教育委員会でも出題されていました。
今回の展覧会でも判じ絵に挑戦するコーナーがあります。
全部で7問あるので美術館に行った人は挑戦してほしいのですが、判じ絵にはパターンが7つほどあるので、ぜひ頭にたたきこんで攻略してほしい。
判じ絵マスターになるのだ。
① 普通読み…描かれたものの読み方をそのまま使う。いわゆる「おやじギャグ」
・将棋の歩(ふ)+菜っ葉(な) → 鮒(ふ・な)
② 逆さ読み…天地が逆に描かれているものは逆さに読む。
・逆さまの椅子(すい)+半分の物干し(もの) → 吸い物(すい・もの)
③ 半分欠き…絵の半分が欠けている場合は、上半分か下半分だけ読む。
・天神の上半分(てん)+将棋の歩に半濁点(ぷ)+虎の下半身(ら) → てんぷら
④ 中央抜き…絵の中央が抜けている場合は、読みの中央を抜く。
・俵(たわら)の中央が抜けている → 鱈(た・ら)
⑤ 濁点「゛」と半濁点「゜」…絵の横に付いている場合は「゛」「゜」を付けて読む。
・足(あし)+濁点(゛) → 鯵(あじ)
⑥ 鳴き声や音…動物の鳴き声(犬=ワン)や楽器の音色(太鼓=ドン)など、広く知られた音で読む。
・犬(ワン)が子守(もり) → 椀盛り(わん・もり)
⑦ 行動や状況…描かれている行動やその場の状況を読む。
・「め」と書いた紙(め)を貼る(はる) → メバル(め・はる)
番外編 天狗・化け猫・妖怪などは「ま」。魔物の「魔」から。
・天狗(ま)が黒い(くろ) → マグロ(ま・くろ)
5章 身振り手振りでこれな~んだ?
歌川広重「新板かげぼしづくし(ひょうたん ほか)」<大判錦絵・天保末期(1840~1842年)頃>
影絵です。
「きつね」しかできない身にとっては、両手だけでこんなにも多彩な表現ができることに唸ることしかできません。
人間の想像力というものは、とてつもないものを生み出すのだなと。
上が、蝙蝠(こうもり)。
下が、土瓶。
上が、からす。
下が、岩に亀の子。
影絵にチャレンジできますので、ぜひやってみてください。
あまり無理し過ぎて指をつらないように。
新作の影絵を生み出してみるのもいいかも。
6章 みんな大好き♪おもちゃ箱
江戸の子どもたちが遊んだおもちゃが集められています。
福笑い、髪型合わせ、ひなだん組立、凧など。
四谷怪談の仕掛け絵など、当時の子どもたちが恐怖に打ち震えるさまが想像できます。
歌舞伎役者をモデルに色々な髪型を当てはめる鬘合は実際に試すことができます。髪型によってこんな印象が変わるものなのか。
7章 人も世相も茶化しちゃえ!戯画ワールド
お上の政治に庶民が口出すことの許されなかった江戸時代。
動物に見立てて世相を風刺する戯画は、大いに人気を博しました。
なかでも、安政二年(1855年)に起こった安政江戸地震の後に描かれた「しんよし原大なまづゆらひ」(作者未詳)という鯰絵がおもしろかった。
地震はナマズが暴れることで引き起こされると思われていた時代。
地震で家が火事になった人、家族が亡くなった人、ケガをした人、仕事が無くなった人、全財産を失くした人など、被害にあった人たちがナマズに罵詈雑言を浴びせて叩きのめそうとしています。
吉原の遊郭も大変な被害を出し、行き場を失った花魁たちもナマズの上に乗っかり怒りをぶつけます。
しかし、当のナマズもふてぶてしいもので「花魁に乗られて気持ちいい」とかほざいてるし……。ナマズってドMだった?
茅ヶ崎市美術館
「江戸の遊び絵づくし」
開催期間 2019年9月7日(土)~11月4日(月・祝)
開館時間 10:00~18:00(入場は17:30まで)
観覧料 一般700円 大学生500円
※高校生以下、茅ヶ崎市内在住65歳以上の方、茅ヶ崎市内在住の障碍者およびその介護者は無料
休館日 月曜日(祝日である9/16、9/23、10/14、11/4は開館)、月曜日が祝日のときの火曜日(9/17、9/24、10/15)
◆茅ヶ崎市美術館(神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1-4-45)
電話 0467-88-1177
茅ヶ崎駅南口より徒歩8分
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